金菱 清(かねびし・きよし)
所属
関西学院大学社会学部教授
専門分野
社会学、環境社会学、災害社会学
研究テーマ
突然、生を中断せざるをえなかった「彷徨える魂」とどのように向き合うことができうるのか。今回の大震災における経験からその一端を解き明かし、その経験(3・11慟哭の記録)を集めるなかから発見できた被災者自らが書き綴る「記録筆記法」という試みを分析した。東日本大震災の現実を見てきた私たちにとって、『震災メメントモリ』概念を提起した。震災メメントモリとは、遺族にとって最も大事なものの喪失を色付けることを通じて、不確かな将来や亡き人を自分たちの側に手繰り寄せ、より確かであろう世界を再建する(生きなおす)人々の営為である。地道なフィールドワークによって見えてきたものは、信仰という意味での「向こう岸」の死者との霊的な交流ではなく、生ける死者との協同実存として、生者と死者の回路をつなぐ技法であった。災害社会学の立ち上げを模索している。
研究の成果
『生きられた法の社会学──伊丹空港「不法占拠」はなぜ補償されたのか』新曜社2008(第8回日本社会学会奨励賞著書の部)
『3.11 慟哭の記録──71人が体感した大津波・原発・巨大地震』(編著)新曜社2012(第9回出版梓会新聞社学芸文化賞)
『千年災禍の海辺学──なぜそれでも人は海で暮らすのか』(編著)生活書院2013
『新体感する社会学──Oh! My Sociology』新曜社2014
『震災メメントモリ──第二の津波に抗して』新曜社2014
『呼び覚まされる霊性の震災学──3.11 生と死のはざまで』(編著)新曜社2016
『震災学入門──死生観からの社会構想』ちくま新書2016
『悲愛──あの日のあなたへ手紙をつづる』(編著)新曜社2017
『私の夢まで、会いに来てくれた──3・11亡き人とのそれから』(編著)朝日新聞出版2018
『3.11 霊性に抱かれて──魂といのちの生かされ方』(編著)新曜社2018
令和元年度社会調査協会賞(優秀研究活動賞)受賞
『災害社会学』放送大学教育振興会2020
『震災と行方不明──曖昧な喪失と受容の物語』(編著)新曜社2020
『永訣──あの日のわたしへ手紙をつづる』(編著)新曜社 2021
『逢える日まで──3.11 遺族・行方不明者家族10年の思い』(河北新報社編集局と共著)新曜社 2022
『災害の記憶を解きほぐす──阪神・淡路大震災28年の問い』(編著)新曜社 2023
『五感でとらえなおす阪神・淡路大震災の記憶──阪神・淡路大震災』(編著)関西学院大学出版会 2023
『生ける死者の震災霊性論──災害の不条理のただなかで』新曜社 2024
Webサイト
金菱清 研究室 サイト https://sites.google.com/a/soms9005.com/kanabun-laboratory/home
リサーチマップ https://researchmap.jp/soms9005